未来の住まいを考える

【第三回】建築士だから分かる、太陽光発電の落とし穴。

電気の自給自足を目指す場合、今までご説明してきた太陽光発電システムや蓄電池の設置が有効です。皆さんの暮らしに直結していることなので、気軽に決断できることでもなければ、決して安価でもないと思います。
実際にメリットを理解した上で、どのように設置を進めていくか、私たちにお客さまとの向き合い方を最後にアピールしたいと思います。

“太陽光発電システムを乗せるために、家をトコトン見る。”

Interviewer:そもそも設計会社が太陽光発電システムを取り扱っているのは珍しいことなんですか?
小島:珍しいかどうかは分かりませんが、家のことの一部と思っているので、私たちにとっては不自然なことではありませんよ。
Interviewer:家の一部と言われればそうですが…。
小島:太陽光発電システムと言っても屋根につければ家のことです。我々は建物の構造から判断し、長い目でずっと快適に暮らせる設置方法を提案しています。
Interviewer:え!? そんな大げさな。屋根に乗せればいいという問題じゃないんですか?
小島:その屋根が結構難しい。重量に耐えうる土台があるのか構造的なことは大変重要です。設置することによって雨漏りが起こるなんてこともよくある話です。外から見える部分でもあるので、装飾性にもこだわりたいですよね。
そして、設置する場所の近辺の都市計画なんかも調べますね、将来的に前に高層ビルが立って全然日が当たらないと言っても誰も保障してくれません。

小島設計と同じ敷地内にある自宅の上にも太陽光発電システムのパネルが乗っている。10年経った今も、衰えることなく有効に使われている。

小島設計と同じ敷地内にある自宅の上にも太陽光発電システムのパネルが乗っている。10年経った今も、衰えることなく有効に使われている。


Interviewer:なるほど、意外に難しいものなんですね。
小島:最近起こった竜巻や水害で、太陽光システムのパネルが飛び散ったというニュースがやっていました。一概には言えませんが、あれは、土台がしっかりしていない上に乗せてしまったのと、取り付けが雑だったという可能性もありますね。災害時でも安心なように、様々な可能性も計算して設置する必要があるんです。
Interviewer:もしかして、空き地でパネルがひずんでいる箇所を見つけたことがありますが、それも関係ありますか?
小島:そうですね。きちんと取り付けなくては、効率的な発電はできません。パネルの角度が少しずれただけでも発電量は大幅に下がってしまいます。設置場所によって、取り付け工事の方法が違ってくるのです。価格を抑えて、簡易的な工事で済ませてしまうと、結局、補修等にかかる費用が大きくなってしまうこともありますよ。

“長く使うものだから、実際に試したものしか勧めない”

Interviewer:それにしても、各社、金額が全然違いますよね?

小島:最近は、本体価格の安い海外のメーカーも出てきました。それだけ太陽光システムが活性化してきたということで、とても良いことです。ただ、金額が安い分、保障もついていない場合も多いんです。
私のところは国内のメーカーしか取り扱っていないのですが、それには訳があります。
Interviewer:なぜですか?
小島:うちの太陽光発電システムがちょうど10年を迎えたとき、特にこちらから知らせていないのに、メーカーの方々がメンテナンスに来てくれたんです。ほとんど破損等してなかったものの、少し色あせている部分があり、無料で交換していってくれました。長い目で安心して使えるように、私たちが試して、良いと実感しているものしかお客さまにはご提案したくないんです。
Interviewer:なるほど。太陽光発電システムを搭載するということは、様々なことを計算した上で工事が必要という事が分かりました。ただ、そこまでしてくれるということは、小島設計にお願いすると他からよりも高いんですか?
小島:よく、建築会社にお願いすると別に費用を取られるんじゃないかと言われます。でも小島設計では、太陽光発電システム等は家の一部と考えているので、それ自体で建築設計費をかけられないというのが正直なところです。

取材中にかかってきた電話も、些細な暮らしの不便を解決したいというお客さんから。一度関わったお客さんとは、長いお付き合いになるとか。

取材中にかかってきた電話も、些細な暮らしの不便を解決したいというお客さんから。一度関わったお客さんとは、長いお付き合いになるとか。

“面倒な暮らしに寄り添いたい。”

Interviewer:では、小島設計にとってメリットはないのでは?
小島:太陽光発電をきっかけに、その暮らしとの接点ができ、長い目で見守っていけることができれば良いんです。ちょっと、良く聞こえすぎましたが、お互いにメリットがあることです。例えば、家のメンテナンスでどこに頼めばよいか分からないことってありますよね?
Interviewer:家が雨漏りしたり、玄関を直したかったりしますが、いちいちネットで検索して専門の会社を呼んで見積もりしてもらって、結構面倒でした。
小島:そういうことは、全部相談してくれればいいんです。その家の構造を誰よりも知っていれば、有効な解決策がすぐに見つけられます。
Interviewer:でも、細々した工事で結構面倒ですよね?
小島:面倒なことをしていきたいんです(笑)。私たちは、快適な暮らしのために、面倒なことをしながら、手をかけて家を一緒に作っていきたいと思っているんです。
Interviewer:家を育てていくって、面倒でも楽しいことなんですね。
小島:そうです。とても楽しいことです。昔ながらの木造建築の我が家は、夏は暑くて冬は寒い、それを壁を補修するついでにサッシを二重窓にしたら保温性も遮音性も良くなり、ますます快適になりました。

古い木造建築の自宅を二重サッシに。外壁工事と同時に進めることにより、工事費用を抑えることもできた。

古い木造建築の自宅を二重サッシに。外壁工事と同時に進めることにより、工事費用を抑えることもできた。

小島:生活のスタイルは年々変わっていくので、それに合わせて補修していくと、家にどんどん愛着も湧きますしね。
Interviewer:なるほど。最初は実は、建築設計事務所と言えば、ハイセンスな家屋ばかりを作っているイメージで、なぜそこが太陽光発電システム? なんて思っていたんです。むしろ、自分の建てた家にはパネルなんて格好悪いもの乗せない! と。
小島:見た目の装飾性はもちろん大切ですが、それ以上に暮らしがどうあるかを大切にしています。効率的なことが私にはスタイリッシュにも思えるし、パネルの見た目も、今は様々な形態があるので、提案次第でますます良いものにもなります。
Interviewer:確かに。お話を聞いて、良く分かりました。いろいろと誤解していてすみませんでした(笑)。
小島:太陽光発電に関しては、電気の仕組みを理解しないと分かりずらいものですし、国の政策もどんどん変わっていきます。設置するにはお金のかかることでもあるので、簡単には判断できないと思います。興味のある方は話を聞きにきていただくだけでも全然構いませんよ。もちろん、それでお金が発生するものでもありませんし。私もついつい余計な本音までお話してしまうかもしれませんが、それで少しでも理解していただければ良いと思っています。
Interviewer:はい。またいろいろ教えてください。本日はどうも、ありがとうございました。
小島:こちらこそ、ありがとうございました。

終わり

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